ゲスト投稿:Arctos Labs
エッジコンピューティングは、ライブ映像処理、5G、AI、VR、ロボティクス、IoT、サイバー物理システムの直接監視・制御などのデジタルサービスの進化をサポートするために提案されています。これらのアプリケーションは、レイテンシ、プライバシー、高性能コンピューティングで必要とされる能力の観点で、デジタルインフラストラクチャに高い要件を課すことが想定されます。
エッジコンピューティングは、通常、ネットワークに送信されるデータ量を削減し、消費されるエネルギーを抑えることを可能にします。しかし、小規模で分散した異種のエッジインフラストラクチャは、利用率が低く、変化するため、効率が低下するリスクがあります。
これらのテーマをより深く理解するために、Arctos Labs、Wind River、RISE(Research Institutes of Sweden)は調査を進めてきました。
エッジからクラウドへのダイナミックな連続体において、特定のワークロードを特定の時間に配置するための最もリソース効率の良い場所はどこでしょうか?
資源効率は、エネルギー効率や環境フットプリントなど、より広い意味で使われており、次の 2 つの側面に関連しています。
1)エッジとクラウドのインフラストラクチャのフリートが、任意の時間に最小のエネルギーでコンピューティング作業を完了するようなタスクの最適な配置
2)能力に関連する、エッジクラウドデータセンターインフラストラクチャの投資決定と設計
この調査により、ネットワーク内のデータセンターノード(クラウドとエッジ)上のすべてのワークロードの総コストと、データ転送によって消費されるエネルギーを考慮したモデルを開発しました。各ノードが処理するワークロードの量に関係なく、単純なPUE係数を使用する代わりに、エネルギー効率は利用率に依存するようになります。
このモデルでは、エッジデータセンターのノードには運用上のスイートスポットがあり、コンピューティング負荷が60~80%程度の利用率のときにデータセンター全体の効率が最も高くなることがわかりました。これは、冷却効率とコンピューティング効率が、実行されるコンピューティング作業に比例しないことに起因します。また、サーバの種類やその構成、周囲温度によって異なります。今回の調査で使用したモデルは、大規模なクラウドデータセンターがスイートスポットに近い状態で常に稼働していると仮定します。
このモデルの調査は、数百のエッジデータセンターノードと(エラスティック)クラウド データセンターのフリートでローカルおよびグローバルの最適化戦略を比較し、コンピューティング負荷をエッジに再分散してハードウェアをスイートスポットに近づける方法を説明することを目的としました。
調査では、エッジDCに必ず配置しなければならないワークロードと、柔軟に配置できるワークロードの2種類を使用しました。ワークロードのリクエストは、ある一定の強度で届くこととし、2つの配置戦略を比較。1つは、エッジに置かなければならないワークロードのみをエッジに置き、それ以外のワークロードはセントラルクラウドに置くという基本戦略。もう1つは、「柔軟なワークロード」もエッジに配置し、エッジデータセンターの運用をスイートスポットに近づけることで、運用効率を高める戦略です。
結果: エッジに柔軟なワークロードを多く配置するローカルおよびグローバル最適化戦略では、以下の結果が得られました。
(a) 4~6%の運用エネルギーを削減
これは、運用上のスイートスポットの近くで実行されるようになったサーバーの使用率が向上したことによる、クラウドノードとエッジ ノードの両方での節約によるものです。
(b) クラウドDCのハードウェア要件を平均50%削減
クラウドDCではコンピューティングリソースが少なくて済むため、ハードウェアの節約(b)が可能です。100台のエッジデータセンターで、ノードあたり24台のサーバを使用するシミュレーション例では、クラウドの容量の要件は840サーバから360サーバに減少しました。
レポートの詳細はこちらからご覧ください。
備考:
データ転送に消費されるエネルギーをこの種のシミュレーションに含めるには、さまざまな方法があります。上記の調査結果は、「わずかな増加」、つまり、ある量のデータを送信することで消費される追加エネルギーに基づいています。固定データ転送ネットワークはエネルギー比例性(データ転送量に対するエネルギー消費量)が非常に低いため、エネルギー転送による貢献度は低く、最適配置にほとんど影響を与えません。
しかし、この問題をよりマクロな視点で捉えると、エッジコンピューティングを活用することで、今後予想されるデータの膨大な波によるデータネットワークの容量拡大を抑えるという側面が、エッジでの配置を左右する最適配置に大きな影響を与えることになります。
このプロジェクトは、ルレオ工科大学LTUのDatacenter Innovation Region - Tillväxt och Export、 https://datacenterinnovationregion.se の助成を受けています。
本記事は、Arctos Labsから発表された記事の抄訳です。