業界をリードする
プロセッサアーキテクチャとは?

プロセッサアーキテクチャと、最も一般的な特長についてご紹介します。

 

プロセッサアーキテクチャとは?

プロセッサアーキテクチャは、コンピュータの中央処理装置(CPU)の設計と構造を指します。CPUはコンピュータの「頭脳」であり、命令の実行や計算を行います。

コンピュータでは、様々なプロセッサアーキテクチャが一般的に使用されており、RISCアーキテクチャとCISCアーキテクチャの2種類が主流となっています。それぞれに特徴、利点、欠点があり、最適なアプリケーションが異なります。

プロセッサアーキテクチャは、コンピュータのCPUの構成を示すもので、用途に応じてさまざまな種類があります。

業界をリードするプロセッサアーキテクチャとは?

CISCアーキテクチャ

CISC(Complex Instruction Set Computer)は、複雑な命令セットと高いコード密度で知られるプロセッサです。CISCプロセッサは、さまざまなタスクを実行できる高度な命令セットを持ち、その結果、コード密度が高く、メモリを効率的に使用できます。

また、特にゲームやビデオ編集など、高度な並列処理が求められるアプリケーションで高い性能を発揮することで知られています。CISCプロセッサはまた、さまざまなソフトウェアと互換性があるため、パソコンやノートパソコンで多く使用されています。

x86/Intel

インテル®はマイクロプロセッサのトップメーカーであり、コンピュータ業界で最も知名度の高い企業のひとつであります。パソコン、ノートパソコン、サーバー、組込みシステム向けの幅広いプロセッサを開発しています。

x86は、ほとんどのパソコンやノートパソコンで使われているインテルのプロセッサアーキテクチャです。1970年代にインテルが初めて開発し、その後AMDなど他のメーカーにも採用されています。CISCアーキテクチャであり、コード密度が高く、さまざまなタスクを実行できる高度な命令セットを持っています。

高い性能と幅広いソフトウェアとの互換性で知られており、パソコンやノートパソコン広く使われています。また、Windows、Linux、macOSなど、さまざまなOSと互換性があります。x86プロセッサーは、組込みシステムやサーバーに搭載されてますが、Arm®などの他のアーキテクチャに比べ、消費電力や発熱量が大きいとされています。

x86アーキテクチャは高い人気を誇っていますが、RISCやArmといったアーキテクチャの台頭により、その地位は揺らいでいます。インテルは、IoTやモバイル機器向けのArmをベースとした、他のプロセッサアーキテクチャも開発しています。インテルプロセッサは、高性能、電力効率、多くのソフトウェアやオペレーティングシステムとの互換性で知られています。

RISCアーキテクチャ

RISC(Reduced Instruction Set Computer)は、CISCプロセッサーに比べてシンプルな命令セットを特徴とするプロセッサです。また、高速な実行と効率的な電力利用で知られており、サーバー、スーパーコンピューター、組込みシステムなどのコンピューティングアプリケーションに適してます。

RISCプロセッサは、複数のタスクを同時に処理することにより、システムの効率的かつ効果的な制御を可能にすることでも知られています。Arm、PowerPC、MIPS、TriCoreなど、多くのプロセッサアーキテクチャはRISCアーキテクチャに基づいています。

Arm

Arm(Advanced RISC Machine)は、スマートフォン、タブレット、その他のモバイル機器やIoT機器で一般的に使用されているプロセッサ・アーキテクチャです。RISCアーキテクチャであるため、命令セットが小さくシンプルであり、低消費電力と小型化を実現しています。Armアーキテクチャは、最小限の消費電力で高性能を実現するように設計されているため、バッテリー寿命が限られている携帯機器に適しています。

また、多くの組込みシステムやIoTデバイスにも使用されています。低消費電力という特性から、電力効率が重視されるサーバーやデータセンターにも適しています。

さらに、Armアーキテクチャはライセンス権を持っており、他社はそのライセンスを取得することで、自社の設計・製造の基盤として使用することができます。そのため、Armアーキテクチャは広く利用されています。クアルコム、サムスン、アップルなどのメーカーは、Armアーキテクチャをベースにプロセッサを設計・製造しています。

PowerPC

PowerPCは、1990年代初めにIBM、アップル、モトローラの3社のパートナーシップによって開発されました。RISCアーキテクチャをベースとし、パーソナルコンピュータ、サーバー、組込みシステムなど、さまざまなコンピューティングデバイスで使用される高性能プロセッサとして設計されました。

PowerPCプロセッサは、1990年代から2000年代初頭にかけてアップル社のマッキントッシュ・コンピュータで特に人気があり、一部のゲーム機やその他の家電製品にも使われていました。また、その高性能とエネルギー効率で知られていますが、Arm、x86、その他のアーキテクチャの台頭により、近年では人気を失っています。

TriCore

TriCoreは、ドイツの半導体メーカーであるインフィニオン・テクノロジーズAGによって開発されました。マルチコア、ならびにマルチスレッド・プロセッサアーキテクチャで、パフォーマンスや効率性の向上につながる、同時に命令を実行できる複数のプロセッシング・ユニット(コア)を持ちます。さらに、内蔵の安全メカニズムにより、安全な動作をサポートします。

TriCoreアーキテクチャは、自動車制御システム、産業機器用制御システム、通信インフラストラクチャなどの組込みシステムや産業オートメーションアプリケーション向けに設計されました。TriCoreプロセッサ、高性能とリアルタイム機能、および複数のタスクを同時に処理できることで知られています。高度な並列処理とディターミニスティックな動作を必要とするアプリケーションに適しています。

RH850

マイクロコントローラ(MCU)のRH850ファミリーは、日本の半導体メーカーであるルネサスによって開発されました。マルチコア、マルチスレッドのTriCoreアーキテクチャをベースにしています。主に、エンジンやトランスミッションの制御、先進運転支援システム(ADAS)、インフォテインメント・システムなどの自動車制御システムでの使用を目的としています。

RH850 MCUは、高度な統合性やエラー検出・修正などの高い安全機能を備えており、自動車業界におけるセーフティクリティカルなアプリケーションに適しています。さらに、高い性能と演算能力を備えているため、複数のタスクを同時に処理し、システムを効果的かつ効率的に制御することができます。

GTM IP

BoschのGTM IPは、業務用および産業機器アプリケーション向けに設計されたネットワークインターカムシステムです。エントリーポイント、セキュリティオフィス、生産現場など、さまざまなステーション間の通信と制御を可能にします。このシステムの特長は、高品質の音声と、屋外や過酷な環境に適した耐久性と耐候性に優れた設計です。また、バックグラウンドノイズの抑制、コール転送、コールキューイングなどの高度な機能も備えています。柔軟性、信頼性、拡張性に優れたGTM IPは、さまざまな業界のセキュリティおよび通信ニーズに対応する人気の高い製品です。

MIPS

MIPS(Microprocessor without Interlocked Pipeline Stages)は、もともとMIPS Computer Systems社(現MIPS社)によって開発されたRISCプロセッサアーキテクチャです。高性能コンピューティングのために設計され、パーソナルコンピュータ、サーバー、モバイル機器、組込みシステム、その他の機器に使用されてきました。MIPSプロセッサは高性能と低消費電力で知られ、携帯機器や組込みシステムに適しています。

また、モジュール式であるため、さまざまなアプリケーションの特定の要件に合わせて容易にカスタマイズすることができます。MIPSプロセッサは過去に広く使われていましたが、Armやx86といった他のプロセッサアーキテクチャの台頭により、その人気は時間の経過とともに低下しています。

ColdFire

ColdFireは、1990年代にフリースケール・セミコンダクタ社(現NXPセミコンダクターズ)が開発したマイクロコントローラ(MCU)アーキテクチャです。元々はモトローラが開発したRISCアーキテクチャである68kアーキテクチャをベースにしています。ColdFire MCUは、産業用制御機器、民生用電子機器、通信など、幅広い組込みシステムでの使用を目的としています。

ColdFire MCUは、高性能と低消費電力で知られ、プログラミングとデバッグが容易であることも特長です。家電製品、車載システム、産業用制御機器、ネットワーク機器などに採用されています。

ColdFireアーキテクチャーは現在は開発されておらず、レガシー製品とみなされていますが、EOLを迎えていない一部の機器ではまだ使用されています。

ウインドリバーのアプローチ

Wind River Diab Compiler

コンパイラは、開発者が使用するソースコードを、さまざまなプロセッサに特化したマシンコードに変換します。Wind River®Diab Compilerは、主要なプロセッサアーキテクチャを
サポートしており、アプリケーションのパフォーマンスを向上させ、メモリフットプリントを削減し、組込みシステム向けの高品質でスタンダードに準拠したオブジェクトコードを生成します。

ウインドリバーには、航空宇宙・防衛から自動車、メディカル、産業機器に至るまで、認証を必要とするさまざまな業界のミッションクリティカルなシステムのソフトウェアとツールを提供してきた長い歴史があります。コンパイラにおける25年以上の経験と、何億台というデバイスへの導入実績をもつ、受賞歴のあるウインドリバーのグローバルサポート部門がお客様をサポートします。

» ソフトウェア・コンパイラの詳細はこちら » Diab Compilerの詳細はこちら

Diab Compilerは、TÜV SÜD(テュフズード)から安全関連ソフトウェア開発の認定を受けています。

Diab Compilerの特長
仕様 機能
  • 速度/サイズの最適化を選択可能
  • 小容量のデータ領域オプティマイザ
  • コードファクターを最適化
  • 逆インライン化
  • プログラム全体を最適化
  • リンクタイム最適化グループ
  • 位置に依存しないコードおよびデータ
  • 容易な割り込み処理
  • 構造化フォーマットの制御
  • メモリマッピングのための豊富なリンクコマンド言語
  • 複数のオブジェクトモジュールフォーマットをサポート
  • 強力な最適化:パフォーマンス、フットプリント、またはその両方に関するソフトウェアをチューニングするための数百の最適化オプションを提供
  • 複数のアーキテクチャをサポート:業界をリードするプロセッサアーキテクチャに対応(PowerPC、Arm、TriCore、RH850、ColdFire、MIPS、Intel)
  • 最新の業界規格に対応:Clangフロントエンド、Edison Design Groupフロントエンド、LLVM/Dinkumwareライブラリ、ANSI C11およびC++17をサポート
  • 主要な安全規格に準拠:ISO 26262 (ASIL Dまで) 、IEC 61508 (SIL 4まで)に対応
  • 高い品質:数百万におよぶテストケースと業界標準のテストスイート(POSIX® PSE52準拠のランタイムライブラリ)を用いたテストを実施
  • 柔軟なビジネスモデル:単一のアーキテクチャに対する永久ライセンス、または複数アーキテクチャに使用できるユーザー単位の年間サブスクリプションから選択可能
  • 受賞歴のあるサポート:最高品質のサポートを提供していることを示すSCP(Service Capability and Performance)認定を取得しているウインドリバーのカスタマーサポート部門がお客様をサポート。日本語を含む、世界各国の言語に対応
  • Long-Term Support(長期サポート):お客様のニーズに応じたサポートを提供

対応するプロセッサアーキテクチャ

単一のツールチェーンを、複数のアーキテクチャで使用することにより効率化を実現します。.

Diab Compiler 5.9.X (Proprietary)
  • PowerPC – E500, VLE, SPE, LSP
  • RH850 – G3M, G3MH, G3K, G3KH, G4MH
  • TriCore AURIX – TC2xxx, TC3XXX, TC4XX, TC1.8x
  • Bosch GTM IP – MCS (3.1.5.1)
  • Arm*
Diab Compiler 7.X (LLVM)
  • Arm
    • Cortex-A/R/M
    • Arm/Thumb 2
    • Armv7-A/R/M
    • Armv8-A/R
      • AArch32
      • AArch64

*新しいArmアーキテクチャのバリアントはDiab Compiler 7.xのみに追加。5.9.xでは、現在のバリアントに対する保守・サポートをアクティブに実施。

図1. Diab Compilerが対応するプロセッサ・アーキテクチャ

VxWorks

VxWorks® は低レイテンシと最小ジッタを実現するディターミニスティックかつプリエンプティブな優先度ベースのRTOSです。将来のアップグレードを考慮したアーキテクチャを基盤としているため、変化する市場ニーズや技術の進化に柔軟に対応できます。.

Intel、Arm、Power、RISC-Vアーキテクチャの32ビット・64ビットのマルチコアプロセッサを包括的にサポートします。C++17、Boost、POSIX、Rust、Python、pandasなどをサポートする唯一のRTOSであり、エッジに最適化された OCI 準拠のコンテナエンジンをサポートしています。これにより、好きな言語、ツール、テクノロジーを使用して、最も重要な分野でイノベーションを起こすことができます。

優れた性能
  • 信頼性とパフォーマンス:VxWorksは信頼性が不可欠な分野において、そのシステムが求める最高水準のパフォーマンスを提供します。地球上での活躍はもちろんのこと、VxWorksは火星において初めて稼働したRTOSです。
  • セキュリティ:VxWorksは接続された世界において、デバイス、データ、知的財産を効果的かつ効率的に保護することができます。VxWorksと、Wind River Security Services、当社の開発プロセスとの組み合わせにより、あらゆる業界で定められている厳しいセキュリティ要件に対応する包括的な組込みセキュリティ機能を提供します。
  • 安全性:VxWorksは安全性を考慮して開発されています。厳密なテストにより、特定業界で求められる厳しい安全認証基準を満たしています。
» VxWorksの詳細はこちら
Security: An RTOS must be secure by design and support cybersecurity countermeasures.

セキュリティ: RTOSは安全に設計され、サイバーセキュリティ対策が不可欠です。

VxWorksは、最新のセキュリティ要件に対応する広範かつ継続的に更新される機能セットを提供します。

Safety: An RTOS and its determinism offer the predictability and reliability of performance to prevent adverse effects on its environment.

安全性: RTOSとそのディターミニズムは、環境への悪影響を防ぐために、性能の予測可能性と信頼性を提供します。

VxWorksは、さまざまな業界で数十年にわたって使用され、実証済みの品質とディミニスティックな機能を提供しています。

RELIABILITY: An RTOS must always perform as expected, producing the same outcome in a deterministic manner.

信頼性: RTOSは、ディターミニズムとパフォーマンスを損なうことなく、常に期待通りに動作する必要があります。

VxWorksは、ディターミニズムや高パフォーマンスを実現し、アプリケーションが常に意図したとおりに動作することを保証するRTOSです。

CERTIFIABILITY: Embedded systems must often gain certification from industry groups or government agencies before being deployed

認証: 組込みシステムは、航空電子機器向けFAA DO-178C、産業機器用システム向けIEC 61508 SIL 3、車載アプリケーション向けISO26262 ASLID、医療安全向けのIEC 62304など様々な安全規格の、デプロイ前に業界団体や政府機関の認証取得が必要です。

VxWorksは、数十年にわたるサービスを通じて、さまざまな業界で数多くの認証取得をサポートした実績があります。

図2. VxWorksの4つの柱