「宇宙の最前線」で進化するリアルタイムソリューション
Sep 4, 2025・航空宇宙・防衛
NASAのアルテミス計画は、人類の月面再訪と、持続可能な月面活動の確立を目指しています。宇宙ステーション、衛星、有人月面移動、船外活動(EVA)などの先進技術は、宇宙飛行士が月面で安全かつ効率的に活動するために欠かせません。過酷な環境に対応するには、高い信頼性と性能を備えたシステムが必要であり、こうしたニーズに応えるため、業界ではより高度なコンピュータアーキテクチャへの移行が進んでいます。
宇宙産業向け技術開発には、さまざまな課題が立ちはだかっています。
- レガシーシステムと、AIを活用した最新技術や自律機能との架け橋
- システムの小型化、軽量化、コスト削減、消費電力の低減
- 科学・軍事宇宙ミッションにおける優先順位や予算の変動によるプロジェクトの不確実性への対応
- リアルタイムでの危険検知、ナビゲーション、持続可能な運用の実現
- 重要度の異なるワークロードを単一プラットフォーム上に統合
これらの課題への対応は、ミッションの成功と宇宙探査のさらなる前進に欠かせません。
新しいアプローチ
今夏、ウインドリバーが共催したIEEE宇宙ミッションIT/宇宙コンピューティング会議では、宇宙探査向け組込みシステムの未来に関する洞察が数多く共有されました。ウインドリバーは、高性能宇宙飛行コンピューティング(HPSC)プラットフォームにおけるMicrochip社との連携、VxWorks®、そしてNASA cFSおよびF'を含むNASAのフライトソフトウェアフレームワークへのネイティブサポートなど、複数のトピックについて発表しました。これらの技術は、既存の宇宙飛行システムとのシームレスな統合を可能にし、次世代の宇宙ミッションを支える基盤となります。
この会議では、宇宙コンピュータアーキテクチャにおける根本的な変化が明らかになりました。従来のように機能ごとに個別のシステムを構築するのではなく、リアルタイムの危険検知からAIによるナビゲーションまであらゆる処理を可能とする統合型の多目的プラットフォームへの移行が進んでいます。こうした統合は、単なる効率化にとどまらず、サイズ・重量・消費電力(SWaP)といった厳しい制約の中で、宇宙空間での持続的な運用を可能にするための重要な戦略です。
最新の宇宙コンピューティングシステムは、エッジで従来のリアルタイム処理とAI/機械学習(ML)ワークロードがシームレスに統合しています。これにより、リアルタイム性を保ちながら、機械学習のアルゴリズムは汎用GPUハードウェア上で実行が可能になります。このような統合により、自律的な危険検知、インテリジェントナビゲーション、適応型のシステム管理といった、月面やその先での探査活動に欠かせない機能が実現されます。
本会議では、宇宙コンピューティングプラットフォームには、拡張性と将来性が本質的に求められることが改めて強調されました。ペイロード分類(クラスA~D)に対応したミッションを支援しリスクを低減する能力は、現代の宇宙探査に必要な汎用性を示しています。また、業界が重視するサイバーセキュリティやソフトウェア相互運用性により、これらのプラットフォームは新たな脅威や要件に対応しながら、宇宙アプリケーションに求められる厳格な認証基準と信頼性基準を満たすことができます。
こうした特性こそが、ウインドリバーの強みです。ウインドリバーは宇宙ミッション向けの技術提供で長年の実績を築いてきました。
ウインドリバーの宇宙向け技術
ウインドリバーが提供する代表的な製品はVxWorksです。VxWorksは低遅延かつ最小限のジッタを実現する決定論的な優先度ベースのプリエンプティブリアルタイムOS(RTOS)であり、ミッションクリティカルなアプリケーションの安定した動作を支えます。また、VxWorksはモダンでスケーラブルなシステム向けに、汎用GPUハードウェア上でAI/MLワークロードを実行することも可能です。さらに、NASAのcore Flight System(cFS)と連携することで、即時フィードバック、危険検知、意思決定を支えるリアルタイムデータ処理を実現する、柔軟かつ拡張性の高いソフトウェアアーキテクチャを提供します。
Wind River® Linuxは、Yocto Projectをベースにした組込みLinuxであり、ウインドリバーのType-1ハイパーバイザー「Wind River Helix™ Virtualization Platform」と統合が可能です。これにより、安全性が求められるアプリケーションと、そうでないアプリケーションを単一のハードウェアプラットフォーム上で統合し、重要度の混在するシステムを実現します。アプリケーション間の分離性を確保しつつ、スケーラブルな設計と効率的なリソース活用が可能になります。
宇宙探査の未来は、単に目的地に到達することではありません。そこに滞在し、安全に活動を続け、宇宙の謎を解き明かしながら、最も過酷な環境下で人類の可能性を押し広げていくことなのです。
ハンス・ウェッゲマン(フィールドアプリケーションエンジニア)