組込みシステムにおける
ITとOTとは?

ITとOTの違いと統合について、また、それらを最大限に活用する方法についてご紹介します。

 

ITとは?

情報技術(IT)とは、情報を管理・処理するために活用する技術の総称です。ソフトウェア開発、コンピュータネットワーク、データ管理に至るまで、幅広い分野と業界を包含します。ITの目的は、ビジネスプロセスを自動化・合理化し、より効率的で効果的なものにすることです。

ITに含まれる重要な領域

  • ソフトウェア開発:シンプルなデスクトップアプリケーションから複雑なエンタープライズシステムまで、コンピュータプログラムやアプリケーションの設計・構築などを含みます。ソフトウェア開発者は、小規模なモバイルアプリケーションから大規模なマルチユーザーシステムに至るまで、プログラミング言語とツールを使用してプログラムを構築します。
IT professionals can specialize in one of a variety of areas, including software development, computer networking, data management, or cybersecurity.
ITの専門家は、ソフトウェア開発、コンピュータネットワーキング、
データ管理、サイバーセキュリティなど、さまざまな分野のいずれかに
特化することができます。
  • コンピュータネットワーキング:ローカル・エリア・ネットワーク(LAN)、ワイド・エリア・ネットワーク(WAN)、インターネットそのものを含む、コンピュータ、デバイス、その他のテクノロジーコンポーネントからなるネットワークの構築と管理がこの分野に含まれます。コンピュータネットワーキングに特化したIT専門家は、ネットワークを円滑、安全、効率的に運用する責任を担い、そのためにさまざまなツールやテクノロジーを使用します。
  • データ管理:情報の収集、保管、分析はITにとって極めて重要です。専門家は、企業のデータが正確・安全・簡単にアクセスできることを保証します。また、データベース、データウェアハウス、データマイニング技術の活用も必要とします。効果的なデータ管理は、多くの企業や組織が情報に基づいた意思決定を行い、競争力を維持するのに役立っています。
  • サイバーセキュリティ:サイバー攻撃やその他の脅威からコンピュータシステムやネットワークを保護する必要性が高まっています。サイバーセキュリティの専門家は、さまざまなツールやテクノロジーを駆使してセキュリティ侵害を検知・防止し、企業のデータやシステムが不正アクセスから確実に保護されるよう努めます。

情報技術は、今日のビジネスや社会で重要な役割を担っています。ソフトウェア開発、コンピューターネットワーキングからデータ管理、サイバーセキュリティに至るまで、IT専門家はテクノロジーを駆使して、プロセスの合理化やデータ保護をするとともに、イノベーションを推進しています。

組込みシステムにおけるITとは?

組込みシステムとは、より大きなシステムの中で特定の機能を実行するように設計されたコンピュータシステムを指します。自動車、スマートフォン、医療機器など、日常的に使用される機器に幅広く使用されています。技術の進歩は、より複雑で高度な組込みシステムを生み出し、その開発にはITの活用が不可欠となっています。

組込みシステムへのITの統合は、その機能と性能に大きな影響をもたらします。ITによって、組込みシステムは複雑なオペレーションの実行やデータの収集・分析、他のデバイスと通信する機能を備え、効率と精度を向上させることができます。

ITの重要な要素

  • 自動化:組込みシステムにITを取り入れる大きなメリットは、プロセスの自動化が可能になることです。例えば自動車業界では、組込みシステムはエンジン制御、トラクション制御、エアバッグ展開など様々な機能を制御することができます。センサーがデータを収集し、アルゴリズムがそれを分析します。ITは、これらのタスクを正確かつ迅速に実行するために必要なコンピューティング機能を提供します。
  • 通信:ITは、組込みシステムが他のデバイスと通信することを可能にし、インテリジェントネットワークの構築を可能にします。例えばスマートホームでは、組込みシステムは照明、暖房、セキュリティシステムを制御することができ、ITによってこれらのシステムが相互に通信することで、エネルギー消費を最適化し、安全で快適な住環境が実現します。
  • データ収集と分析:ITにより、組込みシステムはデータの収集や分析をすることが可能になります。これらのデータを使用してパターンや傾向を特定することで、プロセスの最適化、パフォーマンスの向上、新製品の開発に役立てることができます。例えば、組込みシステムを使用する医療機器は、血圧、心拍数、酸素レベルなどの患者データを収集し、ITプロセスによりこのデータを分析することで、患者の健康に関する見解や新しい治療法の生み出すことが出来ます。

ITは、組込みシステムの機能と性能において重要な役割を果たします。また、性能の最適化、プロセスの自動化、インテリジェントネットワークの構築に必要なコンピューティング能力、通信機能、データ分析ツールを提供します。技術の進化に伴い、組込みシステムにおけるITの重要性は今後も高まり続け、幅広い業界に革新と成長の新たな機会をもたらすでしょう。

OTとは?

オペレーショナル・テクノロジー(OT)とは、産業、製造、インフラ環境において、物理的なデバイス、プロセス、システムを管理・制御するための専門技術を意味します。OTは、物理資産の制御と管理の重点を置くのに対し、ITは主にデータと情報の管理に関係しています。

OTには、機械、機器、設備などの物理的資産を制御・監視するハードウェアとソフトウェアのシステムが含まれます。OTは、企業のオペレーションを自動化・最適化し、安全性、効率性、生産性を向上させます。エネルギー、運輸、水道、製造など幅広い産業がOTに依存しています。

OT professionals focus on physical assets and support their organizations’ improvement of safety, efficiency, and productivity.
OTの専門家は物理的資産に焦点を当て、企業の安全性、効率性、
生産性の向上を支援します。
    OTの重要な要素

  • 監視と制御:OTの重要な構成要素のひとつは、物理的なプロセスや機器を監視・制御するために使用される産業用制御システム(ICS)の使用です。これには、単純なセンサーやアクチュエーターから、複雑なプログラマブル・ロジック・コントローラー(PLC)や監視制御・データ収集(SCADA)システムまで、あらゆるものが含まれます。OTの専門家は、企業の特定のニーズを満たすために、これらのシステムの適切な設定、統合、メンテナンスを監視します。
  • データ収集と送信:OTのもう一つの重要な要素は、産業および製造環境におけるIoTの利用です。センサーやアクチュエーターなどのコネクテッドデバイスがデータを収集・送信することで、企業は業務をよりよく把握し、制御できるようになります。OTの専門家は、IoTデバイスが既存システムやプロセスに適切に統合され、サイバー脅威から保護されていることを確認します。
  • 安全性とコンプライアンス:OTは、効率と生産性の向上に加え、産業・製造環境における安全性とコンプライアンスの確保にも役立ちます。これには、セーフティ・クリティカルなプロセスや機器を監視・制御するための安全計装システム(SIS)エンジニアリングの利用が含まれます。OTの専門家は、これらのシステムが制約および業界基準を満たすように適切に設計、設置、保守されているかを確認します。

OTは、産業や製造業において重要な役割を果たしており、業務を最適化し、安全性、効率性、生産性を向上させるために必要なツールやシステムを提供しています。

組込みシステムにおけるOTとは?

組込みシステムがますます複雑化し、相互に接続されるようになるにつれ、その運用を効率的かつ安全に管理することが不可欠となっています。そこで、組込みシステムのパフォーマンスを管理・監視するために必要なツールや技術を提供するOTの出番となるのです。

組込みシステムにとってのOTの重要性

  • リアルタイムの監視と制御:OTの主な利点のひとつは、組込みシステムのリアルタイム監視と制御を可能にすることであり、オペレータは問題に迅速に対応し、ダウンタイムを防ぐことができます。これは、医療機器や輸送システムなど、公共の安全にとって重要なアプリケーションでは特に重要であります。また、リアルタイムの監視と制御は、組込みシステムの安全性と信頼性を損なうサイバー攻撃などのセキュリティ脅威の検知と対応を支援します。
  • 遠隔管理:OTのもう一つの利点は、組込みシステムの遠隔管理を可能にすることです。これは、システムが遠隔地や危険な環境に設置される可能性がある産業用アプリケーションにとって特に重要です。OTオペレータは、これらのシステムを集中管理された場所から監視・制御することができ、現場要員の必要性を減らし、安全性を向上させることができます
  • データ収集と分析:OTはデータ収集と解析のためのツールも提供し、オペレータは組込みシステムの性能を時系列で追跡することができます。このデータは、トレンドの特定、性能の最適化、問題の事前予測に役立ちます。例えば、製造業では、OTを使用して生産プロセスを監視し、プロセスの最適化とコスト削減の機会をもたらします。
  • 安全性と信頼性:最後に、OTは組込みシステムの安全性と信頼性を確保するために不可欠です。特に産業用制御システムは、事故や機器の故障を防ぐため、厳格な安全基準に従って設計・運用されなければなりません。OTは、安全インターロック、フェイルセーフシステム、緊急シャットダウン手順など、これらの基準を確実に満たすためのツールと技術を提供します。

OTは、組込みシステムのパフォーマンスを管理・監視するために不可欠です。ITと同様に、安全性と信頼性を確保するためのOTの役割は、技術が進歩し続け、組込みシステムが複雑になるにつれて、ますます重要になります。

ITとOTの統合

近年、さまざまな業界でITとOTの統合が進んでいます。ITはデータと情報の管理をし、OTは物理的なデバイスやプロセスの管理に重点を置くというように、かつては両者は別々の存在と考えられていましたが、技術の進歩に伴い、両者の境界線は曖昧になってきています。

企業がIoTとインダストリー4.0の利点を活用しようとしていることも、関連性の高まりの一因となっています。これらのテクノロジーは、センサーやその他の接続されたデバイスから膨大な量のデータを収集・分析することを可能にし、オペレーションの最適化やビジネス成果を改善するために使用できる洞察を提供します。

Companies that successfully integrate their IT and OT systems can benefit from better operational visibility and efficiency, improved cybersecurity, and more flexible operations.
ITとOTシステムの統合に成功した企業は、オペレーションの可視性と効率性の向上、サイバーセキュリティの改善が見込めます。
    ITとOTの統合を推進する要因

  • 効率性:主な推進要因の1つは、より効率的で合理的な運用の必要性であります。ITとOTシステムを統合することで、企業はオペレーションをリアルタイムで可視化できるようになり、より迅速で十分な情報に基づいた意思決定が可能になります。これにより、生産性の向上、ダウンタイムの短縮、顧客満足度の向上につながります。
  • セキュリティ:もう一つの要因は、サイバーセキュリティ向上の必要性であります。コネクテッドデバイスの増加に伴い、産業システムの安全性と信頼性を損なうサイバー攻撃のリスクが高まっています。ITとOTシステムを統合することで、企業は、侵入検知・防止、ファイアウォール、安全なリモートアクセスなどの高度な技術を使用して、サイバーセキュリティ体制を改善することができます。
  • アジリティ:ITとOTの統合は、柔軟性とアジリティを高める必要性によっても推進されています。ビジネスのペースが加速する中、企業は市場や顧客の需要の変動に迅速に対応する必要があります。これらのシステムを統合することで、企業はより機敏で柔軟なオペレーションを実現し、変化に迅速かつ効果的に対応できるようになります。

しかし、ITとOTの統合には課題があります。最も大きな問題のひとつは、この2つにかかわる人材の文化的な違いであります。IT担当者は通常、データと情報の管理に重点を置き、OT担当者は物理的な資産とプロセスの管理に重点を置いています。この溝を埋めるには、両社が協力してITとOTシステムの統合に関連する課題を特定し、対処する必要があります。

もう一つの課題は、OTシステムの複雑さにあります。OTシステムは高度に専門化されていることが多く、効果的に管理するには専門的な知識が必要です。ITとOTシステムを統合するには、両分野とその課題を深く理解する必要があります。

ITとOTシステムを統合することができた企業は、オペレーションをリアルタイムで可視化、サイバーセキュリティ体制の改善、より俊敏で柔軟なオペレーションを実現し、ビジネスを成功することができます。

ウインドリバーのアプローチ

次世代OTを実現するウインドリバーのポートフォリオ

ウインドリバーは、クリティカルなインフラストラクチャ向けにセキュリティ、安全性、信頼性 の高い組込みソフトウェアテクノロジーを提供するリーディングカンパニーです。ウインドリバーは40年にわたり、NASAの火星探査機からその製造工場、旅客機、医療機器、産業システムなど、20億台以上のデバイスを動かすソリューションを提供しています。ウインドリバーは、ソリューションプロバイダが仮想化による次世代製品の実現を検討する際に、イノベーションに向けて開発チームがアジャイルおよびDevOps開発プラクティスを通じて製品品質を向上できるよう支援する、実績のある包括的なポートフォリオを提供しています。

ウインドリバーのポートフォリオは、オペレーティングシステム、
ハイパーバイザ、ツールセットなどにより、IT、OT、およびそれらの
統合を支援します。

リアルタイムOS:VXWORKS

VxWorks®リアルタイムオペレーティングシステムは、何十億ものディターミニスティックなアプリケーションの基盤として、リアルタイムパフォーマンス、セキュリティ、および安全認証により、クリティカルなインフラストラクチャを支援します。VxWorksは、ハードリアルタイム組込みアプリケーションのレイテンシとジッタを最小限に抑える柔軟なプラットフォームで、開発者はソースコードにアクセスして特定のソリューションニーズに合わせてカスタマイズすることができます。VxWorksはハード化されたカーネルをベースとし、高度な暗号化、制御、アラート機能によりアプリケーションの安全性を補完します。また、堅牢な国際標準規格に準拠し、様々な安全規格の認証取得が可能です。

» VxWorksの詳細はこちら
商用組込みLinuxプラットフォーム:Wind River Linux

Wind River Linuxは、最も広く採用されているYoctoプロジェクトベースの商用組込みLinuxプラットフォーであり、カスタムOSの構築に伴う複雑さを伴わずに、特定のデバイスに最適化されたLinux OSを構築することができます。Wind River Linuxはオープンソースであり、無償でダウンロードできるほか、長期的な商用サポートを提供しています。

Wind River Linuxに含まれるKVMハイパーバイザは、仮想化機能を提供し、仮想マシンの管理を可能にします。トレーニングと長期的なテクニカルサポート、継続的な脅威の監視とセキュリティアップデート、コンプライアンスとドキュメンテーションにより、ソリューションのグローバルな輸出を支援します。

» Wind River Linuxの詳細はこちら
リアルタイムな仮想化基盤:WIND RIVER HELIX VIRTUALIZATION PLATFORM

VxWorksをベースとしたWind River Helix Virtualization Platformは、Type 1のハイパーバイザです。仮想マシン内の任意のゲストOSに対応しています。リアルタイムでセーフティクリティカルなアプリケーションを静的で安全なパーティションで、標準的なアプリケーションを動的で柔軟なパーティションで実行し、それぞれの要件に合わせて環境を調整できます。

Helix Virtualization Platformは、マルチOSで重要度が異なるアプリケーションが混在する環境を、単一エッジのコンピューティングソフトウェアプラットフォームに統合することで、ソリューション設計を簡素化し、将来性を確保するとともに、既存のソフトウェア資産の再利用と統合を促進します。また、セーフティクリティカルなアプリケーションの認証や、アジャイルやDevOpsといった最新の開発プラクティスの導入を促進します。

» Helix Virtualization Platformの詳細はこちら
マルチコア・マルチプロセッサプラットフォームに最適化

ウインドリバーのテクノロジーは、32ビットおよび64ビットプロセッサに対応し、マルチコアおよびマルチプロセッサシステム特有のハードウェア並列性に対して広範な最適化を行います。また、スペースや消費電力に制約のあるアプリケーション向けのIntel Atom®プロセッサ、ミドルティアアプリケーション向けのIntel®CoreTMプロセッサ、サーバやクラウドプラットフォーム向けのIntel®Xeon®Scalableプロセッサなど、Arm®からIntel®アーキテクチャまで、幅広いプロセッサに対応した柔軟なプラットフォームを提供します。

Wind River Studio

Wind River Studioは、ミッションクリティカルなインテリジェントエッジシステムの開発、デプロイ、運用、サービスを行うための、クラウドネイティブプラットフォームです。
Wind River Studioの利点:

  • クラウドでの開発:パブリック/プライベート/ハイブリッドクラウドの安全性を確保します。ウインドリバー独自の分散エッジクラウド(powered by Wind River Studio Cloud Platform)、Microsoft Azure、AWSを通じて、クラウドコンピューティングのスケーラビリティ、コラボレーション、リソースを活用します。
  • CI/CDワークフローによるコラボレーション:すべてのワークフローをWind River Studioパイプラインマネージャーで接続することにより、エッジにおけるミッションクリティカルなアプリケーションやデバイスの開発・デプロイを、アジャイルに、セキュアに、かつサイバー攻撃より保護し、一元管理することができます。
  • アプリケーションの統合:Wind River Studio Galleryを使用して、AIからセキュリティ、テスト、自動化機能まで、ライフサイクル管理において開発チームが必要とする最適な場所、時間、方法で、アプリケーションを統合することができます。
  • プロセスの自動化:Wind River Studioのワークフローの自動化デジタルフィードバックループ機能により、AIと機械学習を、開発、セキュリティ、デプロイメント、運用に取り入れます。
  • エッジでの運用・サービス:通信サービス事業者(CSP)や企業は、新しい5Gエコノミーに向けて、エッジまたはエッジからコアまでの一元管理により、フリートや5Gネットワークの更新管理オーケストレーションが可能になります。
» Wind River Studioの詳細はこちら