著者:Paul Parkinson
先日、ミュンヘンで開催されたAerospace Tech Week Europe 2023カンファレンスに参加しました。このカンファレンスでは、業界の課題、規制、テクノロジートレンドに関する講演やアビオニクスセッションが多数行われました。その中で特に注目されたのは、航空宇宙システムの地上システムと航空電子機器システムにおける人工知能(AI)の役割でした。航空宇宙業界はAIの導入において慎重に歩みを進めていますが、私は次のような疑問をいだきました。人間のパイロットではなく、AIが操縦する旅客機に乗りたいと思うでしょうか?
すぐに多くの人が直面する疑問ではないでしょうが、将来的には可能性がないわけではありません。2022年の国際民間航空機関(ICAO)会議で、カナダと日本が貨物輸送における遠隔操縦システム(RPAS)の利用について研究報告を発表しているように、この分野は真剣に検討されています。
航空業界は、COVID-19の流行による人員削減や退職により、膨大な数のパイロットとその経験を失っています。また、労働者の高齢化に伴い、航空需要の増加に追いつくためにパイロットを迅速に採用し訓練することに苦労しています。
ICAOは、複数のパイロットを必要とする航空機を含む民間航空機の規則を定めています。しかし、現在、一部の航空会社は、2人のパイロットではなく、1人のパイロットだけで飛行を始めたいと考えており、多くの国が規則の変更を求めています(Euronews,2021年11月29日)。
航空宇宙業界と規制当局は、早ければ2027年に開始されるであろうシングル・パイロット・オペレーション(SPO)を可能にし、パイロット不足を緩和する方法について議論しています。しかし、最近頻発している飛行中に人間のパイロットが不能になった場合(Aero News、2023年3月26日)、代わりにAIパイロットが操縦を引き継ぐか、もしくは航空交通管制(ATC)が遠隔操縦するか、どちらを望みますでしょうか?
一般的に、これは長期的に考えるべき問題です。現在、航空宇宙業界では、膨大な量の飛行データを分析し、まとめ、人間のパイロットが情報に基づいた意思決定を行い、その作業負荷を軽減できるようにするAIシステムを開発しています。また、航空機の衝突回避システムの意思決定を改善するためにAIを使用する取り組みも進行中です(Aerospace Tech Weekカンファレンスで発表されました)。
欧州民間航空機器協会(EUROCAE)とSAEインターナショナルは、共同ワーキンググループEUROCAE WG-114 / SAE G34を通じて、AI技術を活用した安全性関連システムの開発と認証を支援するための共通規格とガイダンスを確立するために協業しています。ARP-4754A、ARP-4761、DO-178C、DO-254などの現在の航空電子機器安全認証規格にAIシステムを認証することは、実現不可能ではないにしても、非常に困難であると思われます。しかし、安全性が証明された「従来の」ソフトウェアおよびハードウェアシステムの制御下でAIシステムを使用すること(制約付きAI)で十分な答えになるでしょうか、それとも、AIの分析と関連する行動を確認するために、人間のパイロットが依然として必要となるのでしょうか。
最新世代の旅客機の一部には、すでに自動操縦システムが搭載されており、タキシング、離陸、着陸が可能です(New Atlas、2020 年 8 月)。今後数年間で、航空宇宙業界は、AIベースのアドバイザリーシステム、人間のパイロットの作業負荷を軽減するためのAI副操縦士、さらにはアーバン・エア・モビリティ(UAM)システムで最初に導入されるかもしれないAIベースの自律システムの開発で、多くのAI経験を積むと予想されます。
そう考えると、将来、AIパイロットによる旅客機でのフライトは、それほど難しいことではないのかもしれません。