2026年1月27日~29日に開催された「NASA Core Flight System(cFS)シンポジウム」において、ウインドリバーは「Real-Time Deployment and Simulation for the Cosmic Edge(コズミックエッジに向けたリアルタイム展開とシミュレーション)」と題した講演を行い、ミッションクリティカルな宇宙コンピューティングをどのように変革しているかについて紹介しました。本記事では、NASAのcFSや宇宙ミッションが直面する課題に触れるとともに、そうした変革を支えるウインドリバーの技術について紹介します。
~NASA Core Flight System(cFS)シンポジウムより~
NASA cFSとともに進化する宇宙ソフトウェア
NASAのcFSとは?
NASAのCore Flight System(cFS)は、宇宙機向けフライトソフトウェアのための、再利用可能でモジュール化され、拡張性を備えたソフトウェアフレームワークです。タスクスケジューリング、プロセス間通信、データ管理といった中核的なサービス群を提供することで、幅広いミッションを支援できるよう設計されています。cFSのアーキテクチャは高い移植性を備えており、さまざまなハードウェアおよびオペレーティングシステム(OS)プラットフォームに対応可能です。対応OSには、LinuxやRTEMS(RealTime Executive for Multiprocessor Systems)をはじめ、cFSが互換性を持つリアルタイムOS(RTOS)の一つであるVxWorksなどが含まれます。
宇宙ミッションの高度化がもたらす新たな課題
月面での活動から深宇宙探査に至るまで、これからのミッションには、単一のチップ上で多様な要件を同時に処理できるコンピューティングシステムが求められます。たとえば、宇宙飛行士が険しい地形を移動する際のリアルタイムな危険検知、通信が途絶された状況下でのAIによる自律的な意思決定、そして汎用アプリケーションと並行して動作する安全性が極めて重要な生命維持システムなどです。これらすべてを、耐放射線性を備え、厳しい電力制約の下で、最も過酷な環境で動作可能な単一のプラットフォーム上に統合することが求められています。
これらの課題に取り組むことは、ミッションの成功を支えるとともに、宇宙探査技術の進展において極めて重要です。
30年以上の実績で支えるウインドリバーの技術
ウインドリバーは、宇宙技術分野におけるリーダーです。当社のRTOSは、地球外を含め、過去30年にわたって数十件の成功した宇宙ミッションで採用されてきました。ウインドリバーは、最新のソフトウェア開発環境を活用した、Space Grade ready Linuxや安全認証取得可能なRTOSなど、堅牢な組込みソフトウェアOS群を提供しています。
ウインドリバーは、安全性やパフォーマンスを損なうことなく、複数のシステムを単一のコンピューティングプラットフォームに統合するためのアプローチ開発を支援してきました。
以下にウインドリバーの技術をご紹介します。
- VxWorks (リアルタイムOS)
この宇宙向けソリューションの中核となるのがリアルタイムOSのVxWorksです。VxWorksは、決定論的かつ優先度ベースのプリエンプティブRTOSとして、ミッションクリティカルなアプリケーションに不可欠な低遅延と最小限のジッターを実現します。現在では、高性能ハードウェア上でのAI/MLワークロードにも対応しています。数多くのNASAの宇宙プロジェクトにVxWorksが採用されています。 - Wind River Linux (組込みLinux)
Yocto ProjectをベースとしたWind River Linuxは、リアルタイムのデータ分析機能に活用できます。 - Wind River Helix Virtualization Platform (Type-1 ハイパーバイザ)
ウインドリバーのハイパーバイザーソリューションであるHelix Virtualization Platformを使用することで、同一のハードウェア上でVxWorksとWind River Linuxを同時に実行でき、真の混合重要度コンピューティングを実現します。これにより、たとえばフライト管理システムを、他のミッション機能と安全に共存させることが可能になります。各システムは、メモリ割り当てが重複しないセキュアな仮想マシン(VM)内に分離されており、DO-178C DAL Aまでの認証に対応しています。Helix Virtualization Platformは、高価値のフラッグシップミッションから革新的な技術実証に至るまで、クラスAからクラスDのミッションにおけるペイロード向けに、NASAのリスク分類を幅広くサポートしています。 - Wind River Virtual Lab (VLAB)
Wind River VLABスイートは、宇宙システムの開発手法に変革をもたらしています。QEMU(Quick Emulator)やIntel® Simics®、さらに物理ハードウェアとの接続を組み合わせることで、実機ハードウェアに依存することなく、フライトソフトウェアの迅速なプロトタイピングを可能にします。
その他、Wind River Studio Developerと、VxWorks上でのOCI準拠コンテナのサポートにより、安全性が極めて重要な宇宙アプリケーションにもクラウドネイティブなワークフローを導入できます。これにより、効率的な開発とデプロイメントを支える最新のDevSecOpsプラクティスを実現します。さらに、NASAのcFSとのシームレスな統合によって、現代の宇宙ミッションが求めるスケーラブルで柔軟なソフトウェアアーキテクチャを提供します。
商業月面ペイロードサービス(CLPS)の支援、宇宙ステーションの運用、さらには深宇宙での船外活動に至るまで、ウインドリバーのプラットフォームは、人類が多惑星時代へと進む未来を支える基盤となります。宇宙の最前線が、いま私たちを呼んでいます。ウインドリバーは、恒久的な月面基地の構築を可能にし、火星探査を実現し、そして最終的には太陽系全体へと人類文明を拡大していくミッションを支える技術で、その呼びかけに応える準備が整っています。
cFSワークショップでは、ウインドリバーが次世代の宇宙探査を実現するために提供している技術についてご紹介しました。イベントの 詳細は以下をご覧ください。
https://etd.gsfc.nasa.gov/capabilities/core-flight-system/events/
関連リソース:
Wind River Labs:VxWorks ソフトウェア開発キット(SDK)
- VxWorks SDKの機能とツールへのアクセス
- 迅速なプロトタイピングおよび評価環境
VxWorks SDK Labs
VxWorks SDK Forum
Wind River Linux 25 GitHub
- Case Studies
- NASA_IVV Customer Story
- Simics | Virtual Platform and Simulation Software
- Why Hardware-Based Testing Won't Cut It for Today's DevOps Teams
- The Perfect Project
- White Paper - Full Software System Simulations Can Reveal Cyber Attack Vulnerabilities That Other Cyber Security Testing Does Not
- Eight Factors for Effectively Using Simulation at the Intelligent Edge White Paper
- FAA Microprocessor Evaluations for Safety-Critical, Real-Time Application using Intel Simics
- DOT/FAA/TC-19/22 Use of Virtual Machines in
本記事は、ウインドリバーブログの抄訳です。
www.windriver.com/blog/Real-Time-Deployment-and-Simulation-for-the-Cosmic-Edge