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製造業のための知財入門
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ホーム : ウインドリバースクエア : 製造業のための知財入門 : 第4回 特許出願書類の構造と公開特許公報の読み方
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第4回 特許事務所との付き合い方

今回は、特許事務所についてお話しします。特許庁への特許出願などの諸手続きは、特許事務所を通じて行うのが一般的です。企業が知財戦略を推進する上で、特許事務所と上手に付き合うことは大変重要な要素になります。

特許事務所は、弁理士資格を持つ者のみが個人事務所に使用することを許されている名称です。複数の弁理士が共同経営している特許事務所や、法人化して特許業務法人となっている特許事務所もあります。

弁理士は、知的財産を専門とする国家資格者です。弁理士になるためには、年に1度行われる難関の弁理士試験に合格するか、特許庁で審査官業務に7年以上従事した上で、日本弁理士会に登録しなければなりません。なお、弁護士資格を持っていれば、弁理士登録することができます。特許庁への出願手続きを業として出願人に代理する行為は、法律により弁理士の独占業務とされています。よって、弁理士でない者が対価を得て、出願人に代わり、特許庁への出願書類の作成や出願手続きを代行することはできません。

弁理士試験では、特許法、実用新案法、意匠法、商標法、著作権法、不正競争防止法、知的財産に関連する諸条約、など知的財産全般について深い理解が求められます。弁理士は、知的財産に関するあらゆる相談に乗ってくれるありがたい存在です。ただし、医師の外科、内科、眼科などといった区分と同じく、弁理士も色分けされ、強みを持つ領域が特許と商標に大別されます。

中でも特許の場合、弁理士は特許庁への出願手続きだけでなく、出願書類の作成も出願人から任される場合が多いため、弁理士個人によって強みのある技術分野が異なります。特許出願書類を適切に作成するためには、発明の内容について技術的に正しく理解していることが必要になるため、特許を得意とする弁理士には理系出身者が多く、得意としない技術分野について積極的に受任しない傾向があるようです。たとえば、機械工学のバックグラウンドを持つ弁理士であれば、化学分野やバイオ分野の特許出願については積極的に受任しない、といったケースです。

このため、大手の特許事務所では、さまざまな技術分野をバックグラウンドとする弁理士をそろえ、出願人の多用なニーズにこたえられる体制を整えています。大手事務所は、幅広い技術分野の特許出願を取り扱っているだけでなく、意匠・商標を専門とする弁理士が在籍し、意匠出願・商標登録出願も取り扱うのが一般的です。

対して、小規模な特許事務所には、特定の技術分野に絞ってサービスを提供している事務所があるため、うまく探せば特化しているがゆえに経験豊富な弁理士が特許出願をサポートしてくれるかもしれません。中には商標を専門的に取り扱っているところもあり、そうした特許事務所の一部は、「商標特許事務所」を名乗っています。 外国への出願を取り扱っている特許事務所の多くは、「国際特許事務所」を名乗っています。歴史ある老舗事務所の中には、「内外国特許事務所」や「萬國(万国)特許事務所」といった名称を使っているところもあります。ただし、国際特許事務所を名乗らず外国への出願を取り扱う特許事務所もありますから、事務所名をことさら気にする必要はありません。

弁理士に加えて弁護士も在籍し、特許庁への出願手続きから裁判所における侵害訴訟まで幅広く受任する事務所もあります。そのような事務所は、「特許法律事務所」と名乗っている場合が多いようです。知的財産の法的問題におけるワンストップサービスを提供する業務形態と言えます。

このようにさまざまな規模・業態で存在する特許事務所ですが、企業が特許出願などを依頼する際、どのような点に注意すればよいでしょうか。  企業側から見たリスク管理としては、依頼先の安定性・継続性の見極めが重要です。たとえば特許出願の場合、出願から特許権として登録されるまでに3〜4年程度の期間がかかります。また、特許権の有効期間は最長で出願日から20年です。特許事務所は、出願書類の作成および出願手続きを代行してくれるだけでなく、出願後の管理も行ってくれるのが一般的です。すなわち、審査段階で特許庁審査官から出願人へ見解が示されるときなどは、まず代理人である特許事務所に特許庁から連絡が来ます。また、特許庁から指定された期日までに審査官への意見書を提出したり、所定の手数料を収めたりする手続きも代理人である特許事務所を通じて行われま

このように特許事務所には、出願後も長期間、その出願案件の管理事務を委託することになりますので、長期にわたって安定的・継続的に管理してくれるところを選定することが好ましいと言えます。

企業が適切な特許出願をするために、弁理士が作成した出願書類の草案について、出願手続き前に、企業側で受入可能な品質を備えていることを十分に検査することは不可欠ですが、弁理士と密にコミュニケーションして自社の要望を十分に伝え、特許事務所側と出願人である企業側が二人三脚で特許権を取りに行く、というイメージで協力体制を構築することが重要になります。逆に言えば、依頼した弁理士が、たとえ出願する技術分野に精通していたとしても、出願人の納得がいくまで説明してもらえないなど、十分なコミュニケーションを図ろうとしない場合、取り引きを見直した方がよいかもしれません。

出願書類草案を出願前に受入検査することは、出願人である企業側にとってクオリティコントロールの観点から非常に重要な作業になります。弁理士試験は法的知識を問う試験であり、出願書類を作成するスキルは実務を通じて培われるものです。このため、すべての弁理士が高品質な書類を作成できるわけではありません。発明内容について弁理士が正しく理解していたとしても、出願書類の内容に不備があれば、せっかくのすばらしい発明であっても特許権を取れない可能性があるのです。

出願書類草案のチェックは、特許事務所を使う企業の知的財産部門にとって重要な業務の1つと言えるでしょう。特許出願書類は専門的で慣れないと読みづらいものですが、わからないところは特許事務所に積極的に質問し、十分に納得した上で出願するようにしましょう。

このように、特許事務所は企業知財活動の頼もしいパートナーですが、何ごともそうであるように、丸投げではいけません。まかせっぱなしでは良い特許権は取れません。主体的かつ戦略的な知財活動のためには、特許事務所と上手に付き合い、出願人も労を惜しまない心構えが必要です。

■著者プロフィール

佐藤 健一郎(さとう けんいちろう)

一級知的財産管理技能士、知的財産修士(MIP)

慶應義塾大学理工学部機械工学科卒業後、コンサルティングファーム、大手国際特許事務所勤務を経て、金型製造メーカーの知財部長に就任。その後、法務部長を兼務。2010年1月、株式会社第二知財を創業、主に知財部機能を持たない中小メーカーを対象に、知財コンサルティングサービスを提供している。


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