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Linuxイノベーションの推進力


共著/写真1
Alexander Kocher
ウインドリバー
・オートモーティブ部門
ジェネラル・マネージャー


共著/写真2
Peter Kleiner
ウインドリバー
・オートモーティブ部門
シニアシステムアーキテクト

今日、自動車メーカーにとって、車載インフォテインメントシステムは非常に重要です。しかし、コンシューマエレクトロニクスとは大きく異なる自動車の開発サイクルや、さまざまな独自技術が原因で、システムの生産はますます複雑化し、検証が難しい課題となり、コストを増大させ開発期間を長期化する原因になります。。将来のインフォテインメントシステムのコスト効果を高めるには、メーカーとサプライヤの双方が包括的に使用し、再利用できるような、標準化されたプラットフォーム上での構築が不可欠です。それにより、異なった基盤技術やユーザインタフェース設計を使うことによって生じる相違や、車両ごとに異なったアプリケーション構成による差異がなくなります。

開発プロセスを標準化して、人的・技術的リソースを再利用することで、製造コストは大幅に削減し、基盤技術だけでなくイノベーションの開発時間も飛躍的に短縮することができ、品質も向上します。それに見合うような付加価値チェーンおよびビジネスモデルも承認されることが必要となり、すべてのパートナー企業は各々のコア・コンピタンスに一層集中することが要求されます。

オープンソースLinux

Linuxのオープンソースモデルは、スピーディーなイノベーションのサポートに優れています。即座に入手できること、標準化されたドライバとオープンなインタフェース規格により、多数の開発者、企業、組織が参加する開発コミュニティの基盤を構築します。コミュニティとそのプロジェクトやソリューション、商用ソリューションベンダーが一体となり、拡張し続けるエコシステムを形成します。この巨大なエコシステムにより、アプリケーション開発の基盤が提供されます。再利用と調整が前面に出てくるようになり、新規開発といえば、付加価値を生み出すことを指すようになります。開発者は、新規プロジェクトのたびにソフトウェアインフラを一から作り直す必要がなくなり、イノベーションに集中することが可能です。

しかし、Linuxやオープンソースを組込システムに使用することは、常に難題との戦いでした。障害になっているのは、データのサイズ、コードの複雑性、起動時間、GNU Public Licenseとのライセンス問題です。処理済み(かつ部分的に格納された)データのサイズと関係して、ソフトウェアのコードやファイルサイズが深刻な問題でなくなった現在、Linuxベース車載インフォテインメントに関する問題は、車両環境特有の課題とともに、解決されつつあります。

革新的なアプリケーションの迅速な開発の基盤として求められているものは、適切なコンポーネントセットを備え、かつ堅牢で安定したプラットフォームです。オープンなAPIにより、追加アプリケーションを統合できることが必要です。オープンスタンダードは主に、このようなアプリケーションの投資保護に役立ちます。また、オープンソースでは、高性能なテスト環境が提供されることも必要です。

自動車メーカーやサプライヤにとって、これまでになかった新しいアプリケーションの登場以上に、標準化されたプラットフォームが提供されることは、定期的なメンテナンスの一環としてソフトウェアアップグレードと新機能に対応した、新しいビジネスモデルを提供するための道を開くことになります。これらはダウンロードによってインストールすることが可能です。エラーの修正や、新しいアプリケーション、既存アプリケーションの新しいプラグイン(たとえば、新しい動画フォーマット用コーデック)を、このような方法で車にインストールすることができ、ナビゲーション装置の開発が向上します。従来の装置に加えて、SDカードナビやその他のアプリケーションの市場が出現しています。車載向けオープンソースからも、同様の開発がされる見込みです。最短の期間で、あらゆる種類のコンシューマ機器向けに、多数のアプリケーションが開発されるでしょう。

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Linux車載システム


図1:Linux車載インフォテインメントの概要

Linux車載インフォテインメントは、情報システムの基本要件ともいえる標準機能を提供する必要があります。たとえば、音声認識などのアプリケーション、Bluetooth、エコー・キャンセルやノイズ除去用の強力なソリューション、MP3音楽プレーヤーのようなデバイス用接続オプション、各種のエンタテインメント電子機器やビデオ/オーディオ規格に対応したマルチメディアのサポートなどが挙げられます。Google EarthやYouTubeなどのインターネットアプリケーションサービスは、車載ナビゲーションシステムやモバイルナビシステムと連携して使用することができます。また、音楽管理やプレイリスト用ソリューション、マルチメディア、DVDソリューションも、ユーザが期待するところです。

このようなシステムはオープンソースコミュニティで提供されており、すでにPC市場にも入ってきています。前述のエコシステムはこの分野で役立ちます。しかし自動車産業市場では、アプリケーションの迅速かつ正しいインテグレーションを確保し、相互運用性の問題を洗い出すことが可能で完全なテスト環境が必要です。インテルとウインドリバーが共同サポートする、新型省エネプロセッサIntel AtomをベースにしたRussellvilleのようなリファレンスシステムにより、開発者は開発プラットフォームの構築に時間を取られることなく、アプリケーションや有用なユーザインタフェースの開発に集中できます。

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相互運用性

特に関心の高いテーマの1つとして、インフォテインメントシステムとコンシューマエレクトロニクス機器との相互運用性があります。Bluetoothで接続した携帯電話やApple iPodのような音楽プレーヤーなどです。これらの機器はライフサイクルが短いことが特徴であり、このライフサイクルの問題を超えた相互運用性を確保するのが課題です。オープンソースコミュニティの対処方法は、Parrot Bluetooth などの商用ソリューションと同様で、適切なテストによって最新の携帯電話との幅広い互換性を確保します。もう1つの重要な問題は、オープンソースか商用ソースの選択で、その長所と短所はケースごとに評価する必要があります。

Linuxで頻繁に採用されているアーキテクチャ面の重要なコンセプトは、プラグインの使用です。多種多様な基盤デバイス、標準APIのインタフェースやソフトウェアモジュール、標準処理ロジックを組み合わせることで、柔軟でシンプルなプラグインで、デバイスやプロトコルなどの変更に対応することができます。アプリケーションソフトウェアをAPIの上位で更新する必要がありません。このコンセプトは、変化の激しいコンシューマの世界には最適です。新型の携帯電話やiPod、他のコンシューマ機器が市場に出た際には、シンプルなプラグインを交換または追加するだけで対応することができます。

電源

車載デバイス特有の技術的要件に、電源管理と高速オン/オフ切替があります。オン/オフ切替は、常に同じ順番で進むとは限らない個別の操作によって発生します。たとえば、音楽の再生中やハンズフリー通話中にイグニッションスイッチを切ると影響が生じます。また、ユーザが何気なく、始動/停止操作を中断する場合もありますが、その際はオン/オフのプロセスが中断されます。電圧供給(カーバッテリー)は、安定した電源供給を保証できません。これはPCやノートPCでは問題ありませんが、自動車では非常に重要です。一時的な電力損失(イグニッション)が原因で、デバイスが全面的に機能停止することは許容されないからです。


図2:電源管理(有限状態機械の一部)

この場合、Linuxコミュニティは「完全な」ソリューションを提供しません。しかし、このような問題は車載ソフトウェアではよくあることで、必要な対策はすでに分かっており、テスト済みですので、必要な対策を車載インフォテインメント向けにLinuxから提供することが可能です。柔軟な状態決定信号とトリガ信号を備えた有限状態機械(FSM)は、この問題を解決するLinux車載インフォテインメントのコンポネントです。FSMはLinux自体のブートやシャットダウンプロセス用の基盤にもなります。ここではオープンソースコンポネントのリブートが使われ、リブートは高速ブートの基盤も提供します。ただし、ブート時間を絶対的に最小化するには、他のプラットフォームの場合と同様、豊富な経験が必要であり、エンドシステムの具体的な状況にも左右されます。

オーディオとビデオ


図3:オーディオ管理
オーディオ接続マネージャによって、各種オーディオバス(MOSTなど)にオーディオチャンネルをスイッチ、接続します。

現代的な多数のコンフォート機能に加えて、オーディオ信号とビデオ信号の処理は、車載インフォテインメントシステムの中心的な作業です。従来型のソース(ラジオ、CD、DVD)に加えて、Webベースのソース(インターネットラジオ、YouTube、インターネットテレビ)も重要になっています。運転支援システムのカメラ信号も必要です。Webベースのソースには、多種類のオーディオ/ビデオ形式の高品質な処理が要求されます。オープンソースコミュニティでは、多数のコーデックの実装フォーマットを提供しています。また、メディアプレーヤーやマルチメディアアプリケーションも数多く用意されています。プレーヤーロジック、ユーザインタフェース、オーディオ/ビデオパイプラインの大半が、ここで強力に結合されます。この場合、ライセンスの状況に加えて、サードパーティ(MP3など)に特許料を支払うかどうかの問題も対処が必要です。興味深い実装例として、RealPlayerをベースにしたRealのHelix DNAクライアントメディアフレームワークがあります。

車載Linuxに特有のトピックとして、フロントシートだけでなくリアシートソリューションの搭載を狙った、マルチチャンネルオーディオ/ビデオ処理があります。運転者がナビゲーションを利用しても、後部座席の同乗者はビデオを見続けることができます。これを実現するには、別のインフォテインメントシステムを通して実装したり、運転用システムつまり「ヘッドユニット」システムの一部として開発することが可能です。これはCPU負荷の点で、マルチコアの採用により可能になります。

ヘッドユニットを(電子)表示パネルに組み込むと、表示も複数になります。グラフィック/ビデオ面では、一般的なLinux X11システムと適切なドライバによる十分な制御がすでに実現しています。複数のオーディオチャンネルの管理は、もはや提供されなくてはならない追加機能です。異なるオーディオソースに異なる優先順位を与えるという可能性も含まれます。たとえば、電話の着信、ナビゲーションシステムのアナウンス、アラーム信号など車が発する警告信号を優先するために、エンタテインメントは中断する必要があります。

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ネットワーク

インフォテインメントシステムは、PCよりも格段にネットワーク化されています。仕様(たとえば、リアシートエンタテインメント)によっては、分散システムでもあります。Linux車載インフォテインメントでは、分散Linuxシステムがサーバに使用されるケースが多いため、Linuxコミュニティのソリューションを使用できます。Bluetooth、Wi-Fi、WiMAX を使用した無線ネットワークも含まれます。Linux車載インフォテインメントは、この他の接続オプションや、CAN(Controller Area Network)、MOST(Media Oriented Systems Transport)などの、自動車向けネットワーク規格との相互運用性を提供することが必要なだけでなく、FlexRayのような将来のテクノロジに対応できる必要があります。

多数のソフトウェアコンポネントやアプリケーションシステムから構成されるインフォテインメントシステムは、本質的に複雑です。このことは、車載向けのインテグレーションやソフトウェア構造にもあてはまります。レストバスシミュレーションとネットワークプロトコルアナライザは、ネットワーキングプロセスをサポートします。標準化と実績のあるテスト済みソフトウェアコンポネントの使用により、デバイスソフトウェアがサポートされます。これを補うのが、EclipseベースのWind River Workbenchなどの強力な開発ツールです。Workbenchでは従来のコンパイル/編集/デバッグサイクルに加えて、デバイスソフトウェア(Linuxカーネル、コンポネント)の効率的なコンフィギュレーションと、システム全体の動作特性の解析に重点が置かれています。

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ライセンス

従来のオープンソースコミュニティは、該当するライセンスのタイプについて発言を控えてきました。GPLしか使用されないわけではありませんが、コンポネントの大部分がGPLに該当します。たとえば、Linux OSとそのコンポネントの多くは、GPLが適用されます。しかし、アプリケーションにもGPLが適用されるものがあります。GPLは、結果の開示を条件として自由な使用を管理するもので、オープンソースの成功と大規模なLinuxコミュニティに大きく貢献しています。その反面、企業は自社ソフトウェアソースの開示に積極的ではありません。ソフトウェアとLinuxカーネルの密接度が強まるにつれ、このリスクは大きくなり、そのため、基本的ソフトウェアの代表例であるドライバは、Linuxカーネルの拡張機能として設計されるのが一般的です。こういったカーネル拡張機能を、Linuxカーネルのライセンス規約に従ったGPLで開示すべきかどうかは、議論の余地があります。ただし、アプリケーションソフトウェアは、標準インタフェースを使用して、Linuxカーネルから切り離されたプロセスとして動作するのが一般的です。一方ライブラリは、ライブラリコードの開示は求められても、アプリケーションそのものの開示が不要な、条件が緩められたライセンス(GNU Lesser Public Licenseなど)が使用されるケースがほとんどです。

付加価値がプラットフォームから、アプリケーションソフトウェアやトータルなシステムインテグレーションに移るため、Linux車載インフォテインメントのユーザは、有利なポジションに立つことができます。経験によって、GPLに安全に対処でき、企業はLinuxの他のアプリケーション分野と同様に、以前は独自開発アプリケーションだったソフトウェアを、慎重かつ強要されることなく開示し、オープンソースコミュニティを生かして付加価値を創出する体制を整えています。

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環境の標準化

Linuxが標準化団体に採用されるケースが増えています。たとえばOpenSAF Foundationでは、通信部門のソフトウェアアーキテクチャの基盤に商用版Linuxを使用しています。その結果、これまでは主に垂直に統合されていたソフトウェアモデルが、より水平的なモデルに転換しつつあり、新たなユーザによって、通信業界の厳しい性能と品質の要件も満たした、より幅広いイノベーションアプリケーションが提供されています。同じことは自動車業界でも可能です。ソフトウェア標準化団体AUTOSARのような組織が、将来的に標準バージョンの核になるアプリケーション群を開発しています。Vehicle Infrastructure Integration Consortium(VIIC)は、車載機器の試作用ランタイムおよび開発ツールにLinuxを選びました。VIICは米国運輸省が後援しており、標準化された運転者コミュニケーションの支援による交通安全の改善を目指しています。

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車載インフォテインメント向けプラットフォーム

ウインドリバーは、オープンソースベースインフォテインメントのテーマに取り組み、オープンな車載インフォテインメント用プラットフォームを、インテルおよびGracenote、Nuance、Parrot、Planet 9などのソフトウェアパートナーと協力して開発しました。ウインドリバーはデバイスソフトウェアとしてのLinux の知識と、車載ソフトウェアでの長年の経験を提供しています。また、Wind River WorkbenchプラットフォームやWind River Linuxプラットフォームに加えて、サービス、サポート、トレーニングの提供も行っています。自動車関連特有の課題に、Linuxとオープンソースコミュニティソリューションを使って対処しており、電源状態管理、永続性管理、診断管理、車両別ソフトウェアアップデート管理、MOSTやCANなどのレストバスとの接続、自動車専用オーディオ/ビデオ管理をご利用いただけます。

車載インフォテインメント向けプラットフォームは、オープンソースとしてhttp://www.moblin.org/community/ivi/から入手できます。ウインドリバーと参加パートナー企業によって、さらなる開発が進められています。自動車向けLinuxの今後の開発には、どなたでも参加し、貢献していただけます。

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