光センサー液晶パッドのプラットフォームにWind River Linuxを採用
新型Mebiusが搭載する世界初の機能を支える
シャープ株式会社(以下、シャープ)のパーソナルソリューション事業推進本部は、PCや電子辞書、電卓、電話、FAX、スマートフォン、および海外向け携帯電話など、一般消費者向け情報家電の企画・開発を行っています。2009年5月、同本部はノートPCブランドの「Mebius」シリーズにおいて、ノートPCでは世界初となる「光センサー液晶パッド」を搭載したモデル「PC-NJ70A」を発売。10月22日には、最新OS「Windows 7」を搭載する後継モデル「PC-NJ70B/NJ80B」を発売しました。タッチパッド部分に組み込まれた光センサー液晶パッドのプラットフォームに、ウインドリバーのテクノロジーが活用されています。製品開発のプロジェクトメンバーに、Wind River Linuxを採用した経緯と成果についてうかがいました。
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光センサー液晶パッドを搭載した新型Mebius
シャープのパーソナルソリューション事業推進本部が開発し、ノートPCでは世界初となる「光センサー液晶パッド」を搭載した新型Mebius。ユニークで革新的な機能や高級感のあるデザインが消費者から大きな支持を集めており、2009年5月の発売以来、好調な売れ行きを見せています。
同社、パーソナルソリューション事業推進本部 パーソナルソリューション事業部 商品企画部 副参事の和田山 稔氏は、「Webサイトの閲覧や、電子メール、チャット、およびインターネットオークションなど、ネットワークを経由したサービスを利用する頻度が高まる中で、一家に1台のPCを家族間でうまく共有できなくなってきています。そこでわれわれは、家庭の2台目で、個人の1台目となるPCを購入する際に求められる要素機能を実装し、手軽に購入できる低価格と直感的な操作性を重視したノートPCの開発に着手したのです」と新型Mebiusの開発コンセプトについて語ります。
このコンセプトのもとに開発された新型Mebiusの最大の特長は、タッチパッド部に光センサー液晶パッドを搭載していること。液晶パネルのトランジスタ形成面に光センサーを内蔵し、液晶表面におけるマルチタッチ操作とペンによる手書き入力に対応しており、ポインターの移動、表示のスクロール、拡大・縮小・回転などをジェスチャー操作で簡単に行えます。また、光センサー液晶パネルを利用するアプリケーションソフトも充実。パズルやボーリングなどのミニゲーム、ジェスチャー操作で読める電子ブック、手書きで辞書検索が可能な電子辞書、ペンで手描きができるイラスト作成などの機能がユーザーから高い支持を得ています。
同社のパーソナルソリューション事業推進本部 パーソナルソリューション事業部 商品企画部の福富 浩氏は、「最近の電子辞書はメインとサブの2画面構成になっており、サブ画面を利用して手書き入力で辞書検索できるものが増えています。実は、新型Mebiusは電子辞書の付加価値としてパソコン機能を実装すれば面白い、というアイデアから生まれたものでもあるのです」と明かします。
幅広いBSPをカバーするWind River Linuxを導入
ノートPCに光センサー液晶パネルを採用することを決めたのは2008年9月。新型Mebiusの開発に着手した後のことでした。システム構成や仕様を検討する中で、同社の研究開発部が実用可能な技術として保有していた光センサー液晶パネルを発見。これをPCにUSB接続し、光センサー液晶パネルを駆動させるCPUにFreescale i.MX27Lを採用する方針を固めました。福富氏は、「PCにUSB接続する仕様にしたのは、光センサー液晶パネルをPCに内蔵するだけでなく、将来パソコン周辺機器として販売できる可能性を残し、ビジネスの間口を広く確保するためでした」と説明します。
光センサー液晶パネルのプラットフォームの選定では、複数の組み込みOSを比較・検討しました。パーソナルソリューション事業推進本部 NB 商品開発部 副参事の井上 貴英氏は、「BSP(ボードサポートパッケージ)でFreescale i.MX27LをサポートするWind River Linuxを利用した効果を試算し、コストだけでなく、開発期間と開発コストの大幅な圧縮を見込めると判断しました。2008年11月、正式にWind River Linuxの採用を決めました」と語ります。
プロジェクトが開始されると、ウインドリバーのプロフェッショナルサービスから協力を受け、世界初の機能開発に着手しました。カーネルを含めた組み込みOS周辺の開発作業は、組み込みLinuxの開発に定評のある日新システムズ社の設計支援を受け、Wind River Linux上で稼働するミドルウェアやアプリケーションのコーディング作業などは同事業部が実施。2009年5月に新型Mebiusの開発を完了させました。
開発時間を15%短縮し、開発コストを圧縮
当初、プログラミングやデータ変換作業などを含め、組み込みOS周辺の開発に見込まれた期間は約6カ月。パーソナルソリューション事業推進本部はWind River Linuxを採用し、Freescale i.MX27Lに最適化されたBSPを利用できたことで新型Mebiusの開発期間を1カ月短縮しました。
井上氏は、「開発期間を15%短縮できたことはWind River Linux採用の狙いとも一致した大きな成果です。これにより、開発コストを大幅に削減しました」と話します。
同事業部は、2009年5月の新型Mebiusの発売に先駆け、100人のモニターを募集しました。市場投入後は、モニターに評価や感想、利用方法、活用テクニックなどをブログに掲載してもらったり、アンケートに回答してもらったりすることでコミュニティサイトからの情報発信を行い、ユーザーの声を製品開発にフィードバックしています。井上氏は、「光センサー液晶パネルのレビューでは、“使いやすい”や“便利”といった声を多数いただくなど、Wind River Linuxは期待どおりの安定稼働を見せています。マウスなどのポインティングデバイスと同等の操作性を実現するためのチューニングの苦労が報われました」と語ります。
光センサー液晶パッド画面にネコや花などのキャラクターを表示し、指の動きに合わせてキャラクターを滑らかに動作させるオペレーションは、Wind River Linux上で開発した機能です。こうした遊び心が、新Mebiusの付加価値としてユーザーから支持されています。
10月22日に販売を開始したWindows7搭載モデルでも、光センサー液晶パッドのプラットフォームに引き続きWind River Linuxを採用しています。福富氏は、「今後もウインドリバーの優れたテクノロジーをフル活用し、お客さまに継続的な“使いやすさ”と“便利さ”を提供していきます」と話しています。




